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目が覚めると、すでに朝が来ているらしく、閉まったカーテンからの薄明かりが所々床に差していた。
横に目をやれば、暖かい寝息を私にかけ、熱を帯びた体を私にぴったりとくっつけている息子がいる。その胸が穏やかに上下する。
「海斗」
意味もなく名前を呼んで、彼の頭を何度か撫でる。
私のような人間が母親であるばっかりに、彼は日々、緊張しながら過ごしている。
それなのに、心を閉ざすことなく私に笑いかけ、あまつさえ、こんなに安らかな、子供らしい寝顔を見せる。それが、単純に何も考えないでの行動なのか、それともすべてをわかった上でのものなのかわからない。けれど、どちらにしても、罪悪感が刺激される話だった。
優しくあろうと頑張るけれど、仕事を終えて保育園に海斗を迎えに行くときにはもうすべての力を使い果たしていて、彼に真摯に接する気力が湧いてこない。余裕がない。言い訳にしか聞こえないだろうが、事実だった。
ことに、玲央菜の話をされると。感情的にならずにはいられない。
皮肉なのだ。私がうまく付き合えなかった玲央菜。それなのに、海斗とは馬が合うのか、と。
けれど玲央菜に当たるわけにはいかなかった。あの子はダウン症候群。大変だから。故に自然と、八つ当たりのような思いは海斗へ向かう。
今日から年末年始休みだからもう少しのんびりしよう、と思っていると、携帯が震え出した。億劫に思いつつも画面を見れば、そこに表示されているのは「寛人」の二文字。
出ないわけにはいかない、でも、気分が下がることこの上ない。
なぜこの人はいつも、私の気分をぶち壊しにするんだろう。
「はい」
『直子? 今大丈夫?』
本当は、こちらでなにをやっているかなんて、全く考慮しないくせに。口の中で毒づきつつ、「いいよ」と返す。
『単刀直入に言わせてもらうんだけど』
至って冷静、でも棘を含んだその声が、私を攻撃する準備のように息を吸う。
『昨日の玲央菜への態度、あれは、どうかと思う』
返す言葉がなかった。動揺はしていないけれど、落ち着いているというわけでもない、自分でもわからないような気分だ。
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