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灰色の空。冬の空。
渡り鳥なんていうのは、とっくの昔に暖かい国へ飛び立っているはずでした。
でも、そのツバメはまだ、この寒い寒い町にいたのです。翼が折れて弱々しく地面に横たわっていました。
最初、私がそれを見つけたとき、目を凝らしました。
それがツバメだと認識したとき、私はその場から離れようと思いました。
でも、出来ませんでした。
私には帰る家も何もありません。
必然的に、私のように帰る家のない人と、このツバメと幸福の王子がいる広場に留まるしかないのです。
私は少しの間、ツバメと一緒に暮らしてみることにしました。
パンをひとかけらつまみ、ツバメの嘴に差し出しました。
すると、弱々しいながらも、ツバメは目を開きパンを啄み始めます。
私は少しほっとして、残りのパンを食べます。
いつものように、幸福の王子を眺めながら。
幸福の王子というのは、この国の王子の像です。全身が金箔に覆われて、瞳には青い宝石を埋め込まれ、身につける装飾品にはあらゆる宝石が散りばめられています。
きっとこの世の贅の限りを詰め込んだのでしょう。
私は眺めるものがないので、彼をなんとなく眺めています。
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