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「僕もまだまだ子供だね~」
胸の内を誤魔化すようにクシャリと笑って言う蒼に、由弦は何でもないように笑った。
「んなこと言うなって。ほら、俺たちは人間なんだからずっと正しいなんてことは無いし、間違いが絶対に不要なものでもない、って言うだろ?」
妙にキリッと顔を鋭くさせて言う由弦に蒼は思わず噴き出した。
「ふふふ、何それ。弥生様のマネ? それとも優様かな? でもなんだろう、言いそう~」
「これは弥生さまだな! けっこう似てただろ?」
自信満々に言う由弦に、腕の中は半笑いを浮かべた。それがますますおかしくて、蒼は涙さえも浮かべながらケラケラと笑う。
穏やかな空気に安心したのか、クワリと欠伸をして眠っていたサクラであったが、近づいてくる慌ただしい足音にピクリと耳を立てて顔を上げた。その様子に気づいた由弦と蒼も笑いを止めて扉の方を振り返る。刹那、バンッと荒々しく扉が開かれ、ゼェゼェと肩で息をした男が転がり込んできた。
「蒼ちゃんッ、大変だッッ!」
勢いよく入ってきた男に、反射的に警戒態勢に入った二人であったが、蒼はその顔に見覚えがあり慌てて駆け寄った。
「団子屋の親父さんだよね!? そんなに慌てて、何があったの!?」
近頃は商売にならないと言って店を開けることも少なくなっていたというのに、いったいどうしたというのだろうか。蒼が荒い呼吸を落ち着かせるように団子屋の背を撫でる。そんな蒼の手を強く握って、彼は蒼白の顔を上げた。
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