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大丈夫、ともう一度微笑んで、雪也は外へ出る。パタンと音を立てて扉を閉じ、正面に視線を向けた。そこには先程まで全くなかった人影が数多立っている。
見知らぬ者も大勢いたが、中には庵に運び込まれて雪也が治療したことのある者たちも幾人かいた。
「何か、私に御用でしょうか? 随分と物騒な物を持たれているようですが」
雪也の視界に映る者は皆、雪也と同じモノを持っていた。違うとすれば、彼らが持つモノは鞘から抜かれ白銀の輝きを放っているということだろうか。
「物騒なのはそなたも同じこと。抵抗さえしなければ、苦しませたりしない」
中央で刀を構えている男が迷いなく告げる。構えからして紫呉などに及ぶべくもないだろうが、それでも数が多い。さて、一人でどうにかできるだろうかと不安が霞めるが、それをおくびにも出さず雪也は刀に手をかけた。
「その言い方では、苦しむか苦しまないかの違いだけで、道の先は同じだと言われているようですが?」
「その通りだ。そなたに恨みは無いが、大儀の為に散っていただきたい。その犠牲を無駄にすることなく、この国の明るい未来への礎とすると約束しよう」
なるほど、と雪也は刀の柄を強く握った。やはり彼らは弥生の敵なのだろう。いち庶民であり、なんの力も持たない雪也達を葬ったところで春風家も、当然衛府も歩みを止めたりなどしないが、その事に気づく者がいないほど統率が取れず暴走しているのか、それとも歩みを止められずともその心に刃を突き立ててやりたいという私情に捕らわれているのか。どちらにせよ、彼らにとって雪也達が生きる道はない。それだけを確信できれば、雪也の迷いを捨てるには充分だろう。
カチッ、と小さな音を立てて雪也も白刃を抜く。
「ままならぬものですね。我が心さえ貫かせてもらえない、などと」
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