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 みっちゃんが登っている樹というのは、町の中にある一番大きなモミの樹です。なんでも、パパやママよりだいぶ年上だそうで、パパもママもよく知っている樹です。みんなが住んでいる二階建ての家より高いです。  近くにあるビルと同じくらい、高い高い。  元々は、戦前には大きな家の庭に立っていたらしいですが、戦争で大きな家が無くなってしまって、樹も無くなってしまうところだったんですけど、町おこしのシンボルとしてこの樹を残そうとしたんだそうです。勿論こんな事、みっちゃんは小学生になってまだ三年しか経ってないから、まだよくわかってないんですがね。  それよりも、みっちゃんの楽しみは、この大きなモミの樹が、町を上げてクリスマスの飾りつけを行っていることです。町の大人たちがクリスマスの飾りつけをしているなか、みっちゃんは、まっちゃんと一緒に樹に登って、大人たちが飾りつけを行うさまを、まっちゃんと一緒に見ているのが最近の楽しみでした。  きれーい……♪   うん、きれいだね♪ 「──やめなさい」  パパが仕事から帰って来て、ママがみっちゃんが樹登り遊びしている、と言ったらしく、途端にパパが怖い顔になって、みっちゃんに言いました。 「あの樹は、町の人が、頑張ってクリスマスツリーとして飾りつけをしてるんだ。邪魔しちゃ駄目じゃないか」  「……邪魔なんかしてないもん。飾り付けをしてくれる人みんな、親切にしてくれるもん」 「今はいいよ、今は。もうちょっとしたら、あの樹の上に星の飾り付けをするんだ。クレーンとか工事現場で使うような機械でないと、出来ないんだ。 もしみっちゃんが、樹登りして危ないことになったらどうすんだ? 危ないからやめなさい」 「うん……」 「いい子だね」パパは、みっちゃんの頭を撫でてくれました。
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