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 それでもみっちゃんは、まっちゃんは動かないんだけど、なんとか自分の力で引き上げることが出来ました。  でも、まっちゃんを休ませないと……。  思いついたのが、近くにあった樹の茂った奥にあった、太い枝の中にあった洞でした。 「まっちゃん、ここなら休めるね! 」  実は洞の中で休んでいたのは、まっちゃん一人だけじゃ無かったのです。みっちゃんは、それを知っていたからまっちゃんを洞の中に入れてあげた。  まっちゃん一人だけじゃないんだよ。ここで休んでいる子どももいっぱいいるからね。  その洞の中には、まっちゃんと同じように死んじゃったんだけど、ここで休んでいる子どもがいっぱいいました。  でもそこにいる子どもは……、モミの木に、まるで取り込まれていってしまったみたいでした。洞の中にいる子どもたちは、みんなまっちゃんみたいに死んじゃった子どもたちを、栄養にして取り込んでしまっていたのです。  でも、みっちゃんにはそんな難しいことなんてわかりませんでした。だって、取り込まれていったといっても、何年も何年も、じわじわと、少しずつだけど、モミの木の中に吸収されていったのですから。  みっちゃんは、知っているのです。  パパも小さい時に、子どもを死なせてしまって、みっちゃんと同じようにあの洞の中に隠してしまったんだ。だから、あのモミには登るなって言ったんだ。  確証はありません。でも、長い年月を掛けて取り込まれた子どもたちの死体には、パパと同い年だった子どももいる筈なんだ。  だからなんだ。  この近所には、必ず神隠しみたいに子どもが行方不明になる事件が、たびたび起こるのです……。
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