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「っ……く、」
呼吸をするたびに強くなる雄の匂い。なにかを堪えるような久嗣の吐息に、ぞくりと背筋が総毛立つ。
「福重……もっと強くてもいい」
目線をあげると、久嗣が端正な顔を歪ませている光景が映り込む。千草自身も煽り立てられ、酔わされていく。
「もういい、福重」
「え、あっ!?」
不意に久嗣が千草の顔を上げさせた。久嗣はそのまま千草の身体を抱き上げると、深紅のドレスがその場に置き去りにされていく。下着だけを身に纏った千草を久嗣が室内最奥のベッドへと放り投げた。
無言のまま、まるで獣のように唇を舐めネクタイを緩める久嗣に、自然と息が止まった。
「今は……俺だけ、見てろ」
ネクタイとジャケットを脱ぎ捨てた久嗣がベッドに膝をつき、千草を組み敷いた。欲情しきった低い声が鼓膜を揺らす。今にも気が狂れそうなほどの劣情を孕んだ声で、久嗣は絞り出すように言葉を紡ぐ。その声が鼓膜を叩くだけで、下腹の疼きが強くなり、千草の心は歓喜に震えた。
「桐生って……こんなにえろい声してた?」
何気ない千草の問いに久嗣はぴくりと動きを止めた。眉を顰めた久嗣が小さくため息を落とすものの、火照り切った身体はその吐息にすら反応してしまう。
「余計なことを考えられるくらいには余裕あんだな? 気に食わねぇ」
「はっ? ……ぇ、あッ!」
久嗣が背中に手を回し、ブラジャーのホックを外す。汗ばんだ肌に感じる吐息が千草の性感をさらに煽り立てる。
無意識に身体がずり上がってしまうものの、久嗣が瞬時に千草の腰を掴み引き戻す。
「逃がす気はねぇって」
胸元から普段より少し低い声が響いてくる。千草の身体の上を戯れる指先はどこか粗暴で、それでいて的確に快感を与えてくる愛撫が憎たらしく、千草は思いっきり目を瞑り顔を逸らした。
その動作に久嗣の愛撫の手が止まる。彼が身に纏う空気が止まったのも一瞬のことだったが、千草は違和感を覚えた。
彼の表情を確認しようと薄目を開いた刹那、久嗣が千草の身体を持ち上げて裏返しにする。小さく悲鳴をあげるも、そのまま臀部を持ち上げられ、いわゆる後背位の体勢へと持ち込まれてしまう。ストッキングが無残に破られる音が耳朶を打ち、千草は抗議の声を上げた。
「ちょっとっ……っ、あ、ぅ!」
クロッチ越しに秘裂をつぅとなぞり上げられ、背筋をぞくぞくと甘い期待が走り抜けていく。と同時に、片足だけのパンプスが乱暴に脱がされる。
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