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防犯カメラは店内に六台あり、玄関から入って横方向に四本ある通路を撮影する四つのカメラと、レジ付近を撮影するカメラ、レジと反対側のドリンク棚の通路を撮影するカメラがある。トイレの入り口付近が映るのはドリンク棚の通路を映すカメラだ。
「まず、被害者の一橋さんを呼び出したと思われる男がトイレに入った午後七時から七時二十分くらいの映像を見せてもらえますか？」
店長は「わかりました」と返事をして防犯カメラの専用レコーダーを操作してモニタに表示した。
画面には六つの映像が並んで表示される。右下に表示されるドリンク棚の通路の映像にわずかにトイレ入り口のドアが映っているが、中の様子は見えない。
七時二分、パーカーを着てカバンを持った学生風の男性がトイレに入り七時五分に出てきた。その男性は何も買わずに店を出ていった。被害者の一橋はレジに立ち、客が来るたびに玄関の方を見て挨拶をしているようだが、映像のみで音声は聞こえない。学生風の男が店を出るときに目が会ったようで会釈をしていた。
七時十分に会社帰りだろうか、作業着を着た男性がトイレに入っていった。
そして七時十五分、一橋がトイレの方を気にしてレジの方から覗き込むような姿勢をとった。しばらくしてバックヤードから男性店員が出てくると、トイレに向かって歩いていった。事情聴取の情報からすると、トイレの非常呼び出しベルが鳴ったのだろう。
七時十七分、一橋がトイレに入った。
七時十九分、作業着の男性がトイレから出てきた。その男性はその後、弁当を買って七時二十五分に店を出ていった。
七時三十分、中年女性が入店し、真っ直ぐにトイレへ向かい、中へ入った。そして一分もしないうちに、レジの男性店員が異常を察知してトイレに向かった。中年女性が声を上げたと言っていたので、それで気づいたのだろう。男性店員が扉を開け、驚いて後退りする。そしてあとから中年女性が出てきた。
「証言の内容と一致していますね。作業着の男を探しましょうか。店長もう一度、この男性がレジで会計している映像を出してもらえますか？」
緑川は店長にお願いし、その映像を携帯カメラで撮影した。
「参考人として話を聞く必要はあるな。この客の名前などおわかりになりますか？」
黒岩警部は念のためにという店長に質問した。
「この人はわかりませんが、この作業着は近くにあるＡＢＣ工業の方だと思います」
「情報ありがとうございます。緑川、あとで確認取っておいてくれ。連絡がつけば家まで行って聴取だ」
「了解です。ＡＢＣ工業っと」
緑川はメモを取った。
「そろそろ遺体の方を確認するか。鑑識の作業も落ち着いただろう」
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