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警察署まで戻る車中、
「実はコンビニで重要な証拠を見つけたんだ」
と青山が勿体ぶって言う。
「何を見つけたんですか?」
「それはな、トイレの窓の外の血痕さ! 小さい血痕が数カ所あったんだ。鑑識から確認の連絡が来てやはり被害者のものだったよ」
窓の外に血痕!
「どういうことですか? 窓の外で殺されたということでしょうか?」
「外で殺した? そんなわけないだろ。防犯カメラに遺体を運び込む所は映ってないし、窓は人が通れるほど大きくない」
「じゃあどういうことですか?」
「俺にはわかるよ。犯人はきっとトリックを使ったんだ。そのトリックの結果、外まで血が飛んだ。そして犯人はその仕掛けをあとで回収したのさ」
「トリックですか︙︙。一体どんな?」
「それはまだわからない。でも仕掛けを回収できるのは、第一発見者の中年の女性か、あとで駆けつけた女性店員のどちらかだ」
なんだわからないのか、と緑川はがっかりした。遺体のあった個室の中にはモップとバケツはあったものの、トリックの仕掛けらしいものはなかったと思うが、あとで回収したとなるとありえなくはない。窓の外まで血が飛んだのだろうか。
「それから、壁に着いた青い液体は確認しただろ? あれはおそらく何かが書かれた跡だ」
「何かというのは?」
「――ダイイングメッセージさ! 被害者が死ぬ間際に犯人が誰か書いて残そうとしたんだ。でも犯人に気づかれてしまい、掃除用具を使って消され、わずかな跡だけが残った、ということだ。間違いない」
被害者が清掃していたと思っていたが、犯人の方がそうじ用具を使ったとも考えられる訳か。悔しいがあり得るような気もする。
監視カメラさえあれば簡単に犯人はわかるものと思っていたが、実際のところ様々な可能性が考えられるものだ。これは私一人の頭ではどうにも処理できない、と緑川は思った。いや、もう夜の十一時が近づき頭が回らなくなってきていたのかもしれない。
伝えることが随分増えてしまったな。早く友人に話したい。もしかして奴ならこれだけの情報でも犯人がわかってしまうのかもしれない。
もうすぐで警察署に着くところだったが、赤木刑事から青山に連絡が来た。明日の昼には特別捜査本部が設置されるが、その前に情報を整理するため、朝一で黒岩班のみのミーティングを行うということだった。土曜だが休み返上だ。
「今日は早めに寝たほうが良さそうですね。明日からは大学や友人関係をしらみ潰しに聞き込みですね」
警察署に到着すると、緑川は青山と別れて帰宅した。
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