新しい飼い主

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新しい飼い主

「君の名前はジュニだ。良い名前でしょ?」 僕は召使いに濡れた身体を拭かれながら、僕の直属のご主人様、ガブリエル少年を見上げた。金髪に緑色の瞳はいかにも貴族令息然としている。無邪気な、でも僕を撫でる指先が優しくて、僕はすっかり可愛らしい彼が気に入った。 実は、さっき大きな噴水に興奮してしまった僕は、潜っては顔を出し、クルクル回転し過ぎて、すっかりくたびれてしまった。僕の興奮具合に最初は喜んでいたみんなも、最後は呆れ顔で、僕はハッと我にかえると、すごすごと店の主人の元へと戻った。 結局それが良かったのかどうか、僕は晴れてこの城の一員になった。首輪は僕の滑らかな身体からは抜け落ちてしまうので、結局リボンが結ばれることになった。この事は僕が一番ホッとした事だった。 基本的なお世話は、店の主人に扱いを聞いた召使いが交代でする事になって、普段は少年の部屋の籠の中が僕のベッドになった。マットの様なものが敷き詰められている僕のベッドには、柔らかなタオルの様なものも置かれていて、僕は久しぶりに人間の様な安楽な気持ちでぐっすり眠った。 遠くで聴こえてくる、召使い達の朝の仕事始めの音で目が覚めた僕は、しばらく微睡んでいた。けれど、僕のよく聞こえる耳が、廊下をこちらに向かってくる執事の足音を捉えた。僕は急いでご主人様のベッドに這い上がって、掛け物の中に潜り込んで顔を出すと、ペチペチと柔らかな手で少年の頬を撫でた。 ぼんやりと眠そうな目を開けたご主人様は、目を丸くして驚いた後、笑い出した。 「ジュニ!僕を起こしてくれたのかい?ははは。」 丁度その時ノックの音がして、執事が部屋に辿り着いた。 「ガブリエルお坊ちゃま、おはようございます。…お部屋を開けさせていただきますね?」 部屋の扉を開けた執事の顔はなかなかの見ものだった。なぜなら、ガブリエルが満面の笑みで機嫌良く僕を抱きしめて、爽やかに声を掛けて来たのだから! 「セバスチャン、おはよう!僕、ジュニが本当に気に入ったよ!今、僕の頬を撫でて起こしてくれたんだから!アハハハ!」 そう、僕は昨日執事のガブリエルへの小言を聞いていたんだ。寝起きの悪いガブリエルはどうも皆を手こずらせているみたいだったから、ちょっと僕が協力してあげようと思ったわけだ。決して、待遇を良くするために、執事に胡麻擦ろうとしたわけじゃないよ。うん、全然ね?
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