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ガブリエルの兄上
「兄上、ジュニって可愛いでしょう?」
そう言ってガブリエルが僕の頭や首を撫でてくれるので、僕は時々キューぅと呻きながら、腰砕けになっている。途中で撫でる手が止まると、思わずガブリエルの手を引き寄せて、もっと撫でてくれとアピールした。
ガブリエルに兄上と呼ばれたルークは、可愛いガブリエルとはあまり似ていなかった。ガブリエルより濃い金髪に、青が深い綺麗な瞳は、ガブリエルのぱっちりした瞳と違って、鋭かった。ガブリエルが伯爵夫人似だとすると、ルークはイケオジの伯爵に似ている。
「ああ。それにしてもこんな動物は、私も聞いたことがないな。発見されたのがサウリ山の聖水の滝壺付近なんだろう?あそこは基本、聖水の採取以外、人の立ち入りは禁止だからね。そこにいたとすると知られていないのはそのせいかもしれないな。」
そう言って、ルークは僕に手を伸ばした。誰にでも媚を売る僕だけど、何だかルークは油断しちゃいけない気がするんだ。あの鋭い眼差しで見つめられると、僕のことを見透かされてしまう気がするから。
僕が思わず後退りしてガブリエルの背中の方に潜った。するとガブリエルがクスクス笑って、兄上の事が怖いみたいですねなんて言うから、ますますルークの眼差しが厳しくなった。うう、怖い。
「そうなのか?さっき執事に尋ねたら、この動物は誰にでも人懐こいと聞いていたけどね。よっぽどさっき、ビショップに迫られたのが怖かったのかな?」
そう言って、自分の足元に寝そべって眠っているビショップを見下ろした。
釣られて僕もビショップを見下ろしたけれど、突然走ってこられたからびっくりしただけで、わんこ自体は苦手じゃない。実際ビショップは僕と遊びたかっただけみたいだったし…。僕はそろりとソファから降りるとビショップの側へと近づいて囁いた。
『おい、ビショップ。起きろ。』
するとビショップは頭を上げて僕を見た。よく見ると人懐っこい顔をしたこの大きなワンコは可愛らしい。まだ成犬ではないのかもしれない。この大きさで成犬じゃないとか、どれだけ大きくなるんだろう。
『ビショップが僕の言うことを聞くなら、ボール遊びに付き合ってやってもいいよ?どうする?』
するとビショップは尻尾をパタパタして立ち上がった。そして僕が近づくのをじっと待っていた。なかなかお利口さんみたいだ。
『あ、あのね、僕、ボール遊び大好き。さっき噴水で遊んでたの羨ましかったよ。一緒に遊んでくれるの?やったぁ。』
思ったより幼い返事が返ってきて、僕は思わず立ち上がって、ビショップの顔を撫でた。こいつはふわふわの白い毛がめちゃ可愛い。ちょっとよだれが多いけどね。僕はビショップに釣られて、うっかりルークに見られている事を忘れてしまっていた。
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