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誕生
2003年7月23日、午後5時過ぎ。
父の書斎にて。
「ミケ、もう少しだよ!頑張れ!」
学校が夏休みの私が、友達の家から帰ってくると2階から母の声が聞こえてきた。
ミケとは、ここ数ヶ月、ウチで食事を何故か摂る首輪を着けた猫だった。
「虐待されて逃げだしてきたのかねぇ?」
「わかんないけど、せっかくだからウチで飼おうよ!お父さんも居ないしさ」
父は当時、単身赴任で福岡県まで行き、大学で教鞭をとって私達、家族を養ってくれていた。
母は専業主婦、私は当時まだ小学生。
我が家の生活は父の月謝で成り立っていると言ってもいい。
そんな父だが、動物が苦手という点があった。
ウチには滅多に帰って来ないとはいえ、お盆やお正月にはウチに帰ってくる。
母も始めは渋い表情をしていたが、私が可愛がっている内に黙認してくれるようになっていた。
白じの多いミケ猫だからミケ。
我ながら、このネーミングセンスは、もう少し何とかならんものだったのか。
ともかく、謎の猫ミケは、こうして我が家の一員になった。
ミケはお腹が大きかった。
ミケ猫の男の子は滅多に居ないから女の子である以上、妊娠している可能性は否めなかった。
その矢先、冒頭に戻る。
私は、すぐに階段を登って行った。
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