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父が一気に不機嫌になったのが解った。
以前、ミケを家に入れたって言った時も、そうだったから。
私は震えそうになる声を内心、必死に平静になる様に話す。
「そのミケが子猫を産んだの」
『えっ!』
「お父さんの書斎で」
『ええっ?!』
…ダメ。
これ以上は怖くて言えない。
私は受話器を持ったまま、項垂れた。
と、そんな私を見兼ねたのか、母がそっと私の手から受話器を取った。
「まあ、そんな訳だから。勿論、里子に子猫達は出すけど、貴方がお盆に帰ってくる頃はまだ居るから、宜しくねー」
母は、そう言うと父の返事も待たずに電話を切ってしまった。
沈黙する電話。
私は茫然と母を見上げた。
「お母さん、肝心な事お父さんに言ってないけど良いの…?」
「こういうのは手順を踏まなきゃ。いきなり全部話したら、お父さんだって混乱するでしょ?今、アキラが子猫を飼いたいって言っても反対されるわよ」
「えっ…?じゃあ…」
「アキラが、どれだけ子猫を飼いたいと思っているのか知りたかっただけ。よく頑張って、お父さんに話したわね、アキラ」
「んもう!お母さーん!」
私は、母の腕の中でポカポカ母の胸を叩いた。
安堵の涙を流す私の顔を母は優しくハンカチで拭いてくれた。
生後2週間後。
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