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表情も気のせいか、仏頂面になっている様な…。
怖くて父の目を真っ直ぐに見られなかった。
「さあさあ、外暑かったでしょ?居間に行く前にシャワー浴びてきたら?」
母だけが、いつものように明るい。
と、父が靴を脱ぎ、廊下の2階への階段付近まで行った時だった。
トトトトトトトと、足音を軽くたてて、父の書斎からミケが階段を降りてきたのだ。
てっきり子猫達の世話で書斎からは出て来ないだろうと思ってドアを開けておいたのだ。
子育て中の猫が子猫を置いて、やって来る事は滅多にない。
今でも、あの時のミケの行動は謎だった。
新しい気配に警戒したのだろうか?
ミケは父の足元まで行くと、クンクン匂いを嗅ぎ始めた。
「こ、こら、向こうへ行け」
父が固まってそう言うが、ミケは匂いを嗅ぐのをやめない。
「あら、貴方。ミケに気に入られたんじゃない?」
母があっけらかんとそう言う。
だけど、父はそれどころじゃない様子だ。
「良いから、あっちへ行け!蹴るぞ」
「お父さん!ミケの事、蹴らないで!」
私が父にそう言ったのと、ミケが父の足に擦り寄ってきたのは、ほぼ同時だった。
「ひぃっ!」
小さく悲鳴をあげた父だったが、ミケは遊んで欲しそうにゴロンと寝そべりお腹を見せた。
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