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「……お母様」
見つかっちゃったとバツが悪そうな顔をするロゼットに、
「また荊姫を見ていたの? もう、私の王冠まで持ち出して」
これはとても大事なものなのよと、砕けてしまった荊姫のカケラを保管してある王冠の形をした持ち手付きのガラスケースと昔狩猟大会で優勝したロイからもらった王冠を回収して、アリアはロゼットの事を嗜める。
「だって、荊姫はその王冠好きなんだもん」
今も頭に載せているわとロゼットは何もない場所を指差してそう笑う。
「あらそう? 荊姫は気に入ったって?」
ヒトには見えないものが見えるらしい娘の、ブルーグレーの髪を撫でながらアリアは優しく笑う。
「うん、"とっても"って」
満面の笑みでそう言ったロゼットは楽しそうに笑う荊姫と母の顔を交互に見ながら元気に頷く。
「ねぇ、お母様。まだ物語から退場したくなる日ってある?」
とロゼットは無邪気にそう尋ねる。
「物語からの退場……ね」
懐かしいなと思いながらアリアはかつての日々に思いを馳せる。
「アリア! ロゼ、見つかった?」
隠し部屋に入って来たロイは、アリアとロゼットを見てほっとしたようにため息をつき、ロゼットの前に座り込んだロイは、
「はぁぁ、本当、誘拐とかじゃなくてよかった」
そう言って愛娘の頭を撫でる。
「ロイ様、私たちの娘がそう簡単に誘拐されるわけないでしょう?」
自分でついて行くならともかくとため息をつくアリアに、
「そんなの分かんないだろ! うちの娘めちゃくちゃ可愛いし」
俺とアリアの子だぞっとロゼットを猫っ可愛がりするロイに、結婚した頃は子どもなんて欲しいと思ったことはないって言ってなかったっけ? とアリアは苦笑する。
「もう、それより。キチンとロゼを叱ってください。父親らしく」
と今回のロゼットの反撃に灰になっていた教師の顔を思い出し、アリアはそうロイを嗜める。
「ロゼ、やり返すなら立ち上がれなくなるくらい徹底的に叩きのめせっていつも言ってるだろ。俺的にはまだちょっと甘いと思うぞ」
「ロイ様、違う。叱るとこそこじゃない」
わかりました、お父様と目をキラキラさせて答えるロゼットを見ながら、アリアはロイに突っ込まずにはいられない。
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