247人が本棚に入れています
本棚に追加
病院を出た後は、母の好きな洋服店へ行きました。
母がいつも、春物の薄いジャケットを着ていて寒そうなので、温かい服を買ってあげたかったんです。
家にも冬物の服はありますが、何故かいつも、
「それは冬物でしょう。今着たらおかしいがね」と言います。
「今は冬だよ」と返すと、
母「冬? 今は何月だったかね?」
私「1月だよ」
母「1月? ほうきゃね。そりゃ冬だねえ」
私「だからほら、温かい服を着て行こうよ」
母「まあいいがね。季節の先取りだわね」
この会話を一体、何度繰り返したことでしょう。
しかし外へ出ると、「寒い、寒い」と震えます。
一度、家から冬物のジャケットを持ち出して、母に着せようとしたのですが、
「その服は嫌いだでイヤ!」
と断られてしまいました( ̄▽ ̄;)。
なので、母の気に入る服を買ってあげたかったんです。
最初は「そんなことせんでいいがね」と不機嫌そうにしていましたが、実際に試着してみると、
「こりゃいいね。あったかいねえ」
と嬉しそう。
良かった、良かったと思って買ったのですが──
私が実家を出てから、何度も電話がかかってきました。
「知らない人の服が置いてある」とか、「アンタ、服を忘れていったかね?」とか( ̄▽ ̄;)。
そうか、そうなるのか……
新しい服も、なかなか難しいのですね。
最初のコメントを投稿しよう!