263人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、何、比嘉遊ぶのやめたん?」
「おう、俺は心を入れ替えた。今はもう那紬一筋。」
「………マジかよ。」
「そ、だから那紬だけは絶対、金輪際、二度と誘うなよ。」
「何だよ、よりによって片瀬かよ…お前、ズリいな…片瀬本気?比嘉に騙されてんじゃねーの?」
「騙してねーよ、ったく、お前もそろそろ落ち着けよ。」
「うわ、お前にだけは言われたくねー。」
「……山吹君と遥臣って、仲良かったんだ…」
最初は焦って俺達のやり取りを聞いてた那紬が、クスクスと笑いを零す。
「や、別に仲良くはねーけど。」
「何だよ比嘉ー、一緒に女釣った仲だろ。」
「おまっ、言い方!とにかく、分かったな、那紬には声かけんなよ。ほれ、仕事戻れ。」
「あー、一気にテンション下がった。午後から仕事やる気出ねー。比嘉、コーヒー奢れよ。」
「何でだよ、知らねーよ。」
「あ、山吹君、じゃあ私が…ブラックでいい?」
「お、いいの?」
「ちょっ、何で那紬が奢るんだよ、ったく、ほら、どれだよ。」
「悪いねー、比嘉くん。ゴチになりまーす!」
那紬に奢らせるわけにはいかねーから、仕方なく山吹の分のコーヒーと、ついでに自分のと那紬のも買う。
「山吹君、この事は、オフレコでお願いね。」
「え?コーヒー?」
「あ、違くて、私達の事…」
「ん?何、内緒なの?」
「うん、仕事しにくくなるし…」
「へー、秘密のオフィスラブ、なんか、エロいな。」
「お前なぁ…」
チャラさ全開の山吹に呆れつつ、心の中ではもう、いっその事言いふらしてくれと思うけど、那紬の意向だから仕方ない。
「まぁ、とりあえず、そういう事だから、頼むわ。」
「はいはい、まぁ、悔しいから誰にも言ってやらねーよ。」
俺の本心を知ってか知らずか、軽口を叩いた山吹は、缶コーヒー片手に第一営業課に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!