番外編〜episode.2〜

13/30
前へ
/205ページ
次へ
「え、何、比嘉遊ぶのやめたん?」 「おう、俺は心を入れ替えた。今はもう那紬(こいつ)一筋。」 「………マジかよ。」 「そ、だから那紬だけは絶対、金輪際、二度と誘うなよ。」 「何だよ、よりによって片瀬かよ…お前、ズリいな…片瀬本気?比嘉に騙されてんじゃねーの?」 「騙してねーよ、ったく、お前もそろそろ落ち着けよ。」 「うわ、お前にだけは言われたくねー。」 「……山吹君と遥臣って、仲良かったんだ…」 最初は焦って俺達のやり取りを聞いてた那紬が、クスクスと笑いを零す。 「や、別に仲良くはねーけど。」 「何だよ比嘉ー、一緒に女釣った仲だろ。」 「おまっ、言い方!とにかく、分かったな、那紬には声かけんなよ。ほれ、仕事戻れ。」 「あー、一気にテンション下がった。午後から仕事やる気出ねー。比嘉、コーヒー奢れよ。」 「何でだよ、知らねーよ。」 「あ、山吹君、じゃあ私が…ブラックでいい?」 「お、いいの?」 「ちょっ、何で那紬が奢るんだよ、ったく、ほら、どれだよ。」 「悪いねー、比嘉くん。ゴチになりまーす!」 那紬に奢らせるわけにはいかねーから、仕方なく山吹の分のコーヒーと、ついでに自分のと那紬のも買う。 「山吹君、この事は、オフレコでお願いね。」 「え?コーヒー?」 「あ、違くて、私達の事…」 「ん?何、内緒なの?」 「うん、仕事しにくくなるし…」 「へー、秘密のオフィスラブ、なんか、エロいな。」 「お前なぁ…」 チャラさ全開の山吹に呆れつつ、心の中ではもう、いっその事言いふらしてくれと思うけど、那紬の意向だから仕方ない。 「まぁ、とりあえず、そういう事だから、頼むわ。」 「はいはい、まぁ、悔しいから誰にも言ってやらねーよ。」 俺の本心を知ってか知らずか、軽口を叩いた山吹は、缶コーヒー片手に第一営業課に戻っていった。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加