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「ね、私のこと、好きになった?」
今日は私の誕生日だからから、いつもより丁寧に優しく抱いてくれた遥臣に、何度も「なつ…」と呼んでくれた遥臣に、少しでも私を愛おしく思う気持ちが芽生えてるんじゃないかって、懲りもせずに期待してしまう私はやっぱり馬鹿以外の何者でもない。
「………いつも言ってるじゃん。」
「………うん、でも、一応…確認。」
遥臣の答えは分かってる。
それでもちゃんと聞いてから…遥臣に告げようと決めたから。
「那紬といるのは居心地もいいし情もあるし…身体の相性めちゃくちゃいいし…一人の人間として、好きだよ。でもそれは、likeで…」
「loveじゃない…」
いつもと同じ…最初からずっと、変わらない遥臣からの返答に被せた私を呆れ顔で見下ろす顔すら、好きだと思う私の脳は、もうとっくの昔に壊れてしまっているのかもしれない。
「やっぱり変わらない?付き合う気は…」
「アナタも懲りないね…」
傷付いた私を見て、困ったように微笑む遥臣は、やっぱり"彼女を作らない"というポリシーを曲げる気はないらしい。
私の密かな願いは、やっぱり叶わない。
遥臣の気持ちを確認しては、胸を痛めて傷ついて、それでも好きだからと、そばにいられる今が幸せだからと、思ってきたし遥臣にも伝えてきた。
だからきっと、遥臣は私が今から告げる決心なんて、きっと予想も想像もしてないんだよね。
今だって、それでもオレのこと好きなんでしょ?って顔で私のミディアムロングの毛先を指に絡めて弄んでる。
男の人にしては細い、それでも男性らしく節くれだった長い指も、落ち着いた低くて柔らかい声も、切長の目の下の泣きぼくろも、全部、全部、大好きで愛おしい。
好きで好きで、どうしようもないくらい好きだから…
だから…
「もう、やめるね。」
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