一章 絶望の炎

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それでも誰かと繋がっていたくて、夜中窓を開けて小さな声で歌を歌っていた。 昼間は極力、声を出すなと言われていたが我慢出来ずに皆が寝静まった頃を見計らい起き上がる。 夜に声を出さないと、まるで……自分が消えてしまいそうな気がして怖かった。 そんな時、大きな黒い鳥が遊びに来てくれるようになった。 自分と同じ真っ赤な瞳を持つその鳥に親近感を抱いた。 艶のある真っ黒な美しい羽根を持つ鳥は気紛れに訪れた。 いつの間にか毎日、同じ時間にやってくる鳥が話し相手になっていた。 「あなたはどこから来たの?」 「…………」 「私はね、ずっとここにいるんだよ。魔法が使えないし、見た目はこんなだし、目も赤いから悪魔の子とか呪われた子って言われてるんだ」 「…………」 「詰まらなかったかな…………ごめんね、何もあげられなくて」 まるでこちらの会話を聞いてくれるように佇んでいる鳥と秘密の会話をすることがシャルロッテの唯一の楽しみだった。 そしてシャルロッテの話が終わると空に飛んでいく。 そんな姿を見て羨ましいと思った。 朝が来れば、またいつもと同じ……息が詰まるような時間が始まる。
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