一章 絶望の炎

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夜、窓を開けて歌を唄う。 何の曲かは分からないけど、優しい侍女がいつも妹に歌っていたという歌だった。 そうすれば、まるで導かれるようにして鳥は現れた。 それが嬉しくて毎日、歌を唄った。 そうすれば、少しだけ心が元気になるような気がした。 「あなただけだよ。私の側に居てくれるのは」 「…………」 「あ、あのね……今日、ワルツのやり方が書いてある本を見つけたの!だいぶ古いみたいだけど、知らないよりはいいわよね」 「…………」 「ふふっ、いつか私も結婚したりするのかな……でも、こんな私じゃあ、きっと無理だよね」 「…………」 「私にも、魔法が使えたらいいのにな……」 ───そんなある日のこと 鎖が擦れる音が聞こえて体を起こす。 シャルロッテは光が漏れている扉を見て目を見開いた。 (やっと部屋から出してもらえる……!) 喜び溢れるシャルロッテとは違い、冷たい目で此方を睨みつける父と母に肩を揺らした。 「なるべく体型を隠すようなドレスにしろ」 「ついにこの日が来てしまったのね……今までは病気って事にしてきたけど、もう誤魔化せないわ」 「はぁ…………」 「こんな子……生まれてこなければよかったのに」 「…………ごめん、なさい」 「汚らわしい。話しかけないで頂戴」 ドレスの裾をグッと掴んで、小さな声でもう一度「ごめんなさい」と呟いた。
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