第五章 犯行動機

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 スマホの画面を見ながら答えると、あきらは今度は驚きもせず、眉間にしわを寄せる。今度は予想通りだと言った態度だった。そして、その予想が当たっていることがあきらに取っては嫌なことらしい。 「何か心当たりがあるみたいだね」  陽太郎が聞くとじっと虚空も見つめたまましばらく黙っていたかと思うと大きくため息を吐いて視線を陽太郎に戻した。 「実は直の両親は子供の頃に亡くなっているんだ。直が六歳の頃、直の家に泥棒が入ってな。運悪く泥棒が家の中にいるうちに買い物から帰ってきた直たちは泥棒と遭遇してしまった。家の中に最初に入った父親が泥棒の一人と鉢合わせをした。両手に買い物袋を持っていた父親は驚きに呆然としていたが、泥棒がとっさに手に持っていた刃物で父親の腹を刺した。父親は驚きと痛みに混乱しながらも母親と直に逃げろと叫んだ。母親はとっさに玄関に逃げようとしたが、玄関の手前の部屋からもう一人いた女の泥棒が扉から飛び出してきた。父親の叫び声に驚いて物色していた部屋から飛び出してきたらしい」
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