第五章 犯行動機

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「最初の盗みはあまりにもあっさりと成功してしまった。初めのうちは自分たちが捕まるかもしれないと脅えていたが、どれだけ時間が経っても警察が逮捕に来ない。そうすると欲が出てくる。また盗みに入る。成功する。を繰り返しているうちに感覚が麻痺していったんだろう。そのうちにお金がなくなれば盗みに入れば良いと考えるようになったようだ。  さらに盗みをすることに高揚感と快楽を感じるようになっていった。自分たちが捕まるはずが無い。そう信じて夫婦はあちこちに足を伸ばしては窃盗を働いていた。そんな時に直の両親に見つかってしまったということさ。警察に捕まった二人はあっさりと犯行を認めてあらいざらい吐き出したらしい。  直の両親に鉢合わせした時に、すぐに口を塞がなきゃいけないと思ったそうだ。逮捕されれば長い時間刑務所に入っていなければいけないと思った。犯人の二人にはまだ小さい子供がいた。捕まれば子供を犯罪者の子供にしてしまうし、二人が捕まれば子供は誰が育ててくれるのかと考えたらとっさに腹を刺していたらしい。身勝手な理屈だな」
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