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心底呆れたような声色であきらが言う。陽太郎は直の過去の話を聞いて言葉を失う。直は想像を絶する経験をしていた。そんな経験をしたうえであんなふうに柔らかく笑っていられたのかと衝撃を受ける。
「でも、それと花音に何の関係があるっていうんだい?」
半ば予測はできていたものの確認するように陽太郎は尋ねる。
「直の両親を殺害した男の名前は三井亮次、女の名前は三井香織。娘の名前は花音と言う。つまり西条花音。彼女は直の両親の仇の娘ということになる」
「あきらはそのことは知っていた……わけはないよね」
あきらは首を両手を上げて首を横にふる。
「確かに珍しい名前だからな。気にはなったけれど、ただの偶然だと思っていたよ。直の両親を殺した犯人の娘が偶然目の前に現れるなんて、そうそうあるものじゃないからな」
「直は気がついていたと思う?」
「花音の入会で数字が揃ったと直が言っていたということは花音の旧姓を知っていたということだろう。なら、当然知っていたんだろうな」
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