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直の花音に対する態度を思い返してみる。他のサークルメンバーに対する態度と違いは感じられなかった。つまり、適度な距離感で仲良くしていたということだ。両親を殺した人間の娘と知りながら。それは一体どんな気持ちだったのだろう。確かに花音には罪は無い。そう分かっていても人間は簡単に割り切れるものではない。
「……そうか」
陽太郎が表情を暗くするとあきらが大きくため息を吐いた。
「直はきっと花音のことを恨んだりはしていなかったよ。あいつはそういう奴だ。誰かを憂うことはあっても誰かを恨むようなことはない。直はお人好しではなかったが、人を許せる人間だった」
「……そうだね。だとしたら、直は花音に対して恨みを持っていなかったということになるね」
「ああ。しかし、直が恨みを持っていないからと言って花音から直に敵対心を持たない理由にはならない」
あきらはこめかみを人差し指で叩きながら顔をしかめる。
「どういうことだい?」
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