第五章 犯行動機

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「よく考えて見てほしい。花音は両親が殺人の罪で捕まったことを知っていただろう。両親が捕まったのは物心がついたころだろうし、どれだけ育てくれた親戚が隠し通そうとしても隠しきれるものではない。なら、花音が時分の両親が起こした事件を調べるのは難しいことじゃない。大々的に報道もされていたしな。その時に亡くなった被害者の名前と顔写真はみたことがあるだろう。そして一人娘が助かったことも簡単に調べがつくはずだ。  このサークルで直と遭遇したことはおそらく偶然だったんだろうと思う。でも、出会ってしまった時の衝撃は計り知れないものだっただろう。自分は直に責められても仕方が無いと思いながらも怖かったはず」 「でも、直は花音のことを責めるどころか仲良くしてくれた。たぶん、直は花音が犯人の娘だと気がついていないと花音自身は考えただろうね」 「そう。それが自然な考えだ。しかし、何かのきっかけで直が気がついていると知ってしまったらどうだ?」  想像してみる。時分の両親が殺した人間の娘が目の前にいてにこにこと笑顔で接してくれる。それは。 「恐怖以外の何物でもないとは思わないか?」
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