第六章 そして誰もいなくなる

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 ごぼっ。と水っぽい塊が溢れ出す音がした。花音の口から大量の血の塊が吐き出される。 「え? どう……して……」  信じられないという表情をして瞬を花音が見つめる。全身の力が抜けるように両膝をついて地面に倒れる。口から溢れる血を止めようと口元を両手で塞ぐが指の間から大量の血が吐き出された。そのまま、両目を大きく見開いたまま瞬を見つめて花音は死んだ。 「……瞬。君がやったのか?」  岳人はじっと黙ったまま腕を組んで微動だにしない瞬をにらみつける。 「なんとか言えよ!」 「犯人は俺じゃない」  両目をつぶったまま淡々とした口調で瞬が言う。 「この期に及んで言い逃れをするつもりかよ!」  対照的に声を荒らげて岳人が詰め寄る。 「直の仇討ちなんて、そんな事して直が喜ぶはずがないだろう!」  岳人は椅子を立ち上がり瞬に駆け寄ると胸ぐらを掴んで叫ぶ 「俺もそう思うよ」  されるがままになっていた瞬はそれでも、落ち着いた声でいった。その超然とした雰囲気に岳人は息を飲む。 「犯人は俺じゃないよ。お前だろ、二階堂岳人」  半眼になった目で岳人を見つめながら瞬は言った。
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