第六章 そして誰もいなくなる

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「お前は、C館から脱出しようとした時に俺がロビーに居ることに気がついた。だから出るに出られなかったんだ。しばらくは俺が立ち去るのを待っていたのかもしれない。しかし、いつ居なくなるか分からないのをずっと待っていることはできなかったんだろう。  夏の死体も部屋に放置したままだからだ。B館には自分の部屋にこもっているとはいえ花音が残っていたからな。何かの気まぐれで夏の部屋に来られたら死体を見つけられてしまう。  夏の部屋に鍵をかけたのはこのためだよ。夏の死体の発見を少しでも遅らせたかったんだ。自分がC館に移動している間に死体を見つけられたら死体がみつかったのに自分だけ現場にこれないという事態になりかねない。  お前はなるべく早くに俺に見つからないようにC館から出る必要があったが唯一の出口から脱出することはできなかった。だから、お前は一度B館に戻ったんだろう。そして、B館から脱出する方法を考えた。  そのままB館から出ることもできなかった。なぜなら、夏はナイフで刺されて大量の血を流していたからな。少なからず返り血を浴びていたはずだ。その状態でロビーにいる俺に見つかるわけにはいかなかった」
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