第六章 そして誰もいなくなる

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「……結局、僕は瞬に見つからずに夏の部屋のあるB館からは出られなかったんじゃないか。そもそも、僕はあの時、B館にはいなかったでしょ。僕は館の外を調べてたんだ。だからこそ、加奈の体を見つけることができたんだよ。瞬も覚えているだろ?」  岳人は肩をすくめて呆れたように言う。 「確かにあの時、お前は館の玄関からロビーに入ってきた。加奈の体を見つけたと言ってな」 「でしょ。夏を殺した時に僕がB館にいたら瞬に見つからずに出ることはできなかったんだし、僕はB館にはいなかった。つまり、夏が殺された時B館にいた花音が犯人ということじゃないのかい?」  口元にうっすらを笑みを浮かべながら岳人は瞬に反論する。 「B館から脱出はできたんだよ」 「……どうやって?」 「夏の部屋の窓からだよ」 「……確かにあの窓は開かれていたけど、あそこから出るのは無理だろう? 下は断崖絶壁だよ? 向かい側のC館にはいけたかもしれないけど、C館からでることができないはずだ」 「その崖に飛び降りたんだよ」 「正気? あんな高さから落ちたらただではすまないよ」
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