第六章 そして誰もいなくなる

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 加奈と一緒に海に落ちることで返り血も洗い流すことができたんだろう。そのまま崖下まで加奈の遺体と一緒に流れ着いたお前は、館の玄関に回り込んでロビーに入った。加奈の体を見つけたと言ってな。外は雨が降っていたからお前の体が濡れていても疑問にも思わなかったよ」 「俺が、そんな悪辣なことをしたっていうのか? いくら瞬でもその発言は冗談では済まないよ」 「大丈夫だよ。冗談にさせる気はない」  瞬と岳人の視線がにらみ合うように絡む。 「夏を殺して、加奈の体を、尊厳を傷つけたのはお前だよ」 「……そこまで言うんだ。証拠はあるんだろうね」 「あるよ」  瞬が即答すると岳人は目を見開く。 「さっきも言ったが、このゲームの中では事件に関係しないことでは怪我をしないんだ。岳人、その長袖の下を見せてくれないか? 加奈の体を二人で運んだ時、俺はお前が腕を怪我していたのを見たんだ」 「……」  岳人はじっと黙ったまま瞬を見つめたまま動こうとはしない。
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