デュラハン・ナイトにマフラーを

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 あんなこと言わなきゃよかった。子どもというのは残酷だ。  十年以上も昔、小学校に上がる前だったか。公園でボール遊びをしていた僕は、近くに住む安良野(やすらの)かるめが砂場で遊んでいるのを見つけた。彼女は僕に背を向けて、プラスチックの型で砂を固めたり、バケツで山を作ったりしていた。声をかけようとして、ふと気づく。彼女のうなじを横切るように、ミミズが這ったような赤い線が走っている。ご丁寧にそれを指でなぞって、僕は彼女に尋ねた。 「かるめちゃん、これ、なあに?」 悪意はなかった。純粋に疑問だったし、病気や怪我かもと心配する気持ちもあったかもしれない。それでも、僕の言動は彼女を刺激するには十分だった。 「しらない! あさとくん、あっちいって!」 かるめはそう叫ぶと、うなじを押さえつけるように手で隠し、砂遊びの道具を置いて走り去ってしまった。彼女の反応を見て、触れてはいけないことに触れてしまった、と子どもながらに思った記憶がある。  その後、険悪とまではいかないものの、かるめとは距離ができてしまった。何度か謝ろうとしたけれど、そのたびに話題にすべきではないという気持ちが僕を引き留めた。  心にわだかまりが残ったまま、ずるずると月日は経っていった。
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