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まさか、こんなところでリスナーに遭遇するなんて、死体とご対面するよりもすごい。
「あ、ありがとうございます。わたしの恥ずかしいトークに耳を傾けてくださって」
「いやいや。うちの若手社員に聴かせてやりたかったですよ。受け答えもはっきりしていて、さすが、警視庁の刑事は違うなと」
コトリはこそばゆくなった。
「あ、わたし、ちょっと、お手洗い、お借りしますね」
コトリはリビングルームから出て、洗面所へ向かった。ふわふわの絨毯。壁には有名絵画。どこかの高級ホテルに迷い込んだかのようだ。
騎士の像の前で立ち止まった。
御堂筋先生は美術品や骨とう品が好きなのだろう。まあ、税金対策もあるだろう。やっぱり、占い師って、儲かるのかなあ。薄給の公務員には雲上の生活だ。
彩夢館が地元で、債務館なんて呼ばれているのは、地元民のやっかみが入っているのだろう。人間の闇の部分を見せつけられて、気分が落ち込む。
洗面所も高級ホテルにありそうな装備だ。掃除も行き届いている。あの執事が一人で掃除にあたっているのか?もし、そうだとしたら、キング オブ 執事だ。
気分よく用を済ます。コトリは探索したい気持ちに駆られた。ただ、昔、転校生の屋敷に招待されて、屋敷内を勝手にうろついて、迷子になった苦い思い出がある。
だからか、その気持ちを消した。
リビングルームに戻ると、小栗真子さんが相談から戻っていた。先ほどと打って変わって、顔色が至極良くなっていた。なんだか、憑き物が取れたようだ。
「コトリさん、やっぱり、彩夢先生は神です!」
突然、手を握られ、コトリは戸惑う。
「よかったねえ。それも、今回は無償でしょう。小栗さん、ラッキーね」
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