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「ええ。なんか、得しすぎて後が怖いな」
「それで、先生は何て?」
「はい。産みなさいって。生まれてくる子は金の卵だって。だから、わたし、産みます」
「だって、元彼は認知する気、ないでしょう?」
「それでも、先生が言ったんだから、絶対正しいはずです」
信じる者は救われるとは、言い得て妙だ。
執事が皆の飲み終えたカップを片付け始めた。
コトリは執事に近づいて、ちょっとだけ、話しかけた。
「執事さんも、御堂筋先生の相談者だったのですか?」
突然、話しかけられた執事は、キョトンとした。
「あ、失礼しました。仕事中でしたね」
「いえ。構いませんよ。わたしではなくて、娘がね。相談者だったのですよ」
「じゃあ、執事さんは御堂筋先生の占いは、眉唾物だとお考えですか?」
執事は苦笑した。
「いいえ。眉唾物だったら、ここまで有名にはなってません。それに、リストラされたわたしを雇ってくださった御堂筋先生には、足を向けて寝れません。先生はわたしの恩人です」
「リストラというのは...?」
「お恥ずかしい話です。わたしは、住宅販売会社の営業でした。ある日、肩たたきに遭いまして。まあ、営業成績も芳しくなかったですから、リストラされても、文句は言える立場じゃなかったです」
「執事に採用されたんですか?」
「娘の相談にわたしも、随行したんです。そしたら、先生が突然、わたしがリストラされたことを言い当てて...。実はリストラされたことは、家族には秘密だったんですが、娘にバレてしまって...。でも、その後、瓢箪から駒で、執事として、わたしを雇用したいと、先生から申し出がありました。だから、わたしは本当にラッキーでした」
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