1日目 前半

14/15
前へ
/31ページ
次へ
「ええ。なんか、得しすぎて後が怖いな」 「それで、先生は何て?」 「はい。産みなさいって。生まれてくる子は金の卵だって。だから、わたし、産みます」 「だって、元彼は認知する気、ないでしょう?」 「それでも、先生が言ったんだから、絶対正しいはずです」  信じる者は救われるとは、言い得て妙だ。  執事が皆の飲み終えたカップを片付け始めた。  コトリは執事に近づいて、ちょっとだけ、話しかけた。 「執事さんも、御堂筋先生の相談者だったのですか?」  突然、話しかけられた執事は、キョトンとした。 「あ、失礼しました。仕事中でしたね」 「いえ。構いませんよ。わたしではなくて、娘がね。相談者だったのですよ」 「じゃあ、執事さんは御堂筋先生の占いは、眉唾物だとお考えですか?」  執事は苦笑した。 「いいえ。眉唾物だったら、ここまで有名にはなってません。それに、リストラされたわたしを雇ってくださった御堂筋先生には、足を向けて寝れません。先生はわたしの恩人です」 「リストラというのは...?」 「お恥ずかしい話です。わたしは、住宅販売会社の営業でした。ある日、肩たたきに遭いまして。まあ、営業成績も芳しくなかったですから、リストラされても、文句は言える立場じゃなかったです」 「執事に採用されたんですか?」 「娘の相談にわたしも、随行したんです。そしたら、先生が突然、わたしがリストラされたことを言い当てて...。実はリストラされたことは、家族には秘密だったんですが、娘にバレてしまって...。でも、その後、瓢箪から駒で、執事として、わたしを雇用したいと、先生から申し出がありました。だから、わたしは本当にラッキーでした」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加