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「お待ちしておりました。お連れ様含めて2名さまですね。さ、どうぞ。リビングルームにウェルカムティーをご用意しております」
恭しく対応する執事は、現代の日本では、とんとお目にかかれなくなった。なんだか浮世離れしている雰囲気に、コトリは来てよかったと思った。
執事の態度が良かったせいか、毒舌全開の尾形くんも、口にチャックがついたように静かになった。
無駄に長い廊下を歩いていると、重厚な扉の前に着く。扉は黄金。どうやら彩夢先生は扉には拘りがあるらしい。
扉の向こう側にはすでに、何人かの先客がいた。老若男女問わず、招待客がソファで寛いでいた。
どうやら、コトリたちがしんがりだったみたいだ。
執事がテーブルの上のポッドからカップにウェルカムティーを注いでいた。仄かに落ち着く香りが鼻をつく。
「お熱いですので、気を付けてお飲みになってください」
尾形くんは適当に椅子に座り、カップをしげしげと見つめた。
「どうしたの?飲まないの?」
コトリが訊く。
「いや。なんか、睡眠薬でも入ってるんじゃないかなって...」
「どうして、そういう発想になるわけ?」
「だってさあ、占い師に招待されるなんて、睡眠薬飲まされて、判断力を遮断して、高い壺や石なんか、買わされるんじゃないかと思って...」
「尾形くん、日本中の刑事顔負けの猜疑心を持ってるのね」
コトリが怖い冷めた目で睨みつけた甲斐があってか、尾形くんはしぶしぶ、カップに唇をつけた。
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