18人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
コトリはいつの間にか熱くなっていた。尾形くんは知らぬ間に席を離れていた。
「まあ、あの方、旦那さん?」
「いいえ。単なる連れです。あの、ここの招待客って、無作為に選ばれたんですか?」
「わたしもよく分からないの。ただ、相談料をたくさん払っているとか、水晶や勾玉を多く購入しているとかは、関係ないみたいね」
コトリは改めて、招待客たちを見た。
招待状が届いたのは、今から一週間も前。黄金色の封筒が投函されていた。
不審に思いながら開封してみると、御堂筋先生直筆の手紙だった。
最初の一文は「あなたは選ばれました」だった。御堂筋先生から直々に指名された。コトリは思わず、跳びあがっていた。こんなに嬉しかったのは、警察官採用試験の合格通知を受け取って以来だ。
では、ここにいるゲストは皆、選ばれたってこと?選ばれた理由はわからないけれど、彩夢先生は何か考えがあっての人選だったのだろう。
「あの、わたし、介護士をしています。砂川節子と申します。よろしくお願いします」
節子はポーチから名刺を差し出した。
「介護士さんですか...。やっぱり、悩み相談とかは、仕事関係が主ですか?あ、すみません。立ち入ったことをお聞きしてしまって」
コトリは平身低頭で謝った。
「いいんですのよ。話し相手が欲しかったの。ほら、わたし、職場が結構、賑やかだから、こういった静かな場所は居心地が悪くて...」
いつの間にか、節子はコトリの隣に座った。
「御堂筋先生って、不動産投資に失敗して、負債を抱えているって本当ですか?」
コトリは小声になる。
最初のコメントを投稿しよう!