1日目 前半

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「週刊誌では、そう書かれていますけど、不動産投資といっても、先生は遊び程度でやっていたので、負債は抱えていないはずです。だって、先生は半年先の予約すら取れない、人気の占い師ですよ」  そんな占い師を良く思っていない輩はいるものだ。特に週刊誌の売れ行きを良くしたいマスコミは事実無根なことでも、平気で記事にしてしまう。 「やっぱり、やっかみ入ってますね」  コトリが囁くように言うと、人の気配を感じた。見ると、そこに、一人の背の高い中年男性が立っていた。  コトリも砂川さんもギョッとして見上げた。 「驚かしてすみません。わたし、実はこういう者です」  男性は恭しく、財布から名刺を差し出した。肩書はルポライター。木原歩となっていた。では、この人は招待客ではない? 「わたしも実は、御堂筋先生に招待されました。言い方は悪いですけど、御堂筋先生の活動を注視して記事にしています」 「え、もしかして、あの変な記事書いたのって?」と砂川さんが訊く。 「はい。わたしが書きました。今でも、相談者から法外なお金を徴収している御堂筋先生を糾弾するつもりで追いかけています」  目の前の木原という男は、御堂筋先生にとっては敵だ。敵を中に招き入れるなんて、御堂筋先生は何を考えているのか? 「あ、今、あなた、どうして御堂筋先生の敵がいるのかと思いましたね?うん。疑問に思うのも無理はありません。それには理由があります」 「どんな理由?」と砂川さんが訊く。 「御堂筋先生は、自分自身が今夜、殺されると自身の未来を占いました。それでですね、わたしは3日前に先生から直接、電話を受けて、もし、わたしが殺されるようなことがあったら、記事にしてほしいと依頼されました。だから、わたしは特別枠で招待を受けたしだいです」
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