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「ようこそ。彩夢館へ。皆さまは胸を張ってください。皆さまはこの、わたくしに選ばれたのですから。若い人から御年を召した人まで、バランスよく選抜いたしました。占いの前では貴賤や身分は関係ありません。平等なのです」
彩夢先生は一人ひとりの顔を確かめながら言った。その透き通る声は、聞く者を別世界へと誘う効力があった。
彩夢先生は一旦、言葉を切った後、唇を湿らせてから、再び話し始めた。
「世間では、わたしのことをペテン師だとか、ねずみ講だとか陰口を叩いているものが散見されますが、その方たちの心も浄化してさしあげたい。でも、占いというものは相互間の信頼関係で成り立つものです。わたくしが未来を示したところで、受ける側が疑念を抱けば、未来が変わってしまうのです。昔からよく言いますね。信ずるものは救われると。この中には、マスコミ関係者もおりますが、今回の集まりを機に、占いについて考えを改めてもらえればと思っております」
木原は表情を硬くした。
「まあ、そちらの女子大生さん、あなた、あまり体調が良くないみたいね。ん、もしかしたら、あなた、妊娠しているんじゃないかしら?」
真子は驚愕の表情を浮かべた。
「は、はい。つい最近、彼氏と別れちゃいました...。妊娠を知ったのは、その後です...」
「まだ、親には話していない。元彼もとりつく島がない。まず、小栗真子さん、最初はあなたの相談に乗りますよ。後で、わたくしの部屋に来なさい」
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