竹の琴

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 彼は十二月に奈良マラソンを走った。  かつての都、平城京の南を走り緊張した。夏に要人が凶弾に倒れた現場に思いを寄せた。  奈良市から天理市へ走る途中で楽器を叩く音が聞こえた。竹が奏でられているようである。木琴ならぬ竹の琴である。心地よい響きが背中を押す。勇ましい太鼓とは別な温かみが感じられる。  折り返して再び竹の琴を聞いた。道を挟んで竹林に反響する。竹の琴に包まれているようで心地いい。  ふと考えた。彼は何になりたいのだろうか。  心地よく響く音になりたいのだろうか。  良い音を奏でる竹になりたいのだろうか。  良い音を奏でる者になりたいのか。  いや 良い言の葉を紡ぐ者になりたい
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