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「さくら……だ、黙っておれ!そなたに何が分かると言うのだ。拙者が今こうして生きておるのも、姫様が救ってくださったからこそなのだ!」
「それはあたいも同じさ。お優しい姫様のおかげであたいも生きてる。マジでラブだよ。でもさあ……」
「ならばなぜ、そなたはこうして平気でおられるのだ!?
大恩ある姫様の窮地に働けずして何が侍だ!決めた、拙者は行くぞ!」
「はあ?どこに?」
「知れた事、姫を救って差し上げるのだ!拙者の元狼流の居合斬りでならず者を成敗致す!」
するとさくらは一瞬目を丸くし、次に大声で笑った。
「いやだねえあんた、もう草草の草!
心配しなさんな、この祝言は姫様自ら望んでの事だよ。ハッピーな祝言なんだよ。だからあたいも笑顔で見送ったのさ」
「はっぴーな祝言だと……?」
解せぬ。ならば姫は何故に涙に濡れておられたのだ。あれ程に人が泣いておる所を拙者は生まれて初めて見た。
人が泣く時とは、悲しい時ではないのか?
「だいたい姫とあたい達じゃ身分が違う、住む世界が違うんだよ。分かってるだろ?行った所で何も出来やしないって。
太郎、あんたまさか忠義と違うものを混同してないかい?」
違うもの?何だそれは……?
ええい、問答している暇は無い!
「とにかく拙者は行かねばならぬ!」
「もう!分かんない子だね!
チー牛で子供で弱虫のくせに何が出来るのさ?」
さくらの体がゆらりと動いた瞬間、拙者を襲う無数の拳!
「ぐあっ!」
「遊虎流桜乱打!
どうしても行くなら、あんたが一度も避けられた事が無いこの技を破ってからにしな!」
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