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義父の考え
「あら、それは杏奈さんにも責任があるわね。それに一度きりの遊びなら、目をつぶってあげなさいな。まったくモテない夫よりもいいでしょ?」
_____何を言ってるんだ?この人は
雅史を庇うつもりなのだろうけど。
「一度だけじゃありません、これまでにも何人かの女性と……。いえ、問題はそこじゃないんです」
だんだん興奮してきて声が大きくなってきているのは自覚があったけど、止められなかった。
「じゃぁ何が問題なの?」
「浮気相手と電話かLINEをしてて、圭太から目を離した、そして圭太は滑り台から落ちて怪我をしたんです、近くにいた人が救急車を呼んでくれたのに、この人は圭太が落ちたことにも気づいてなかったんですよ!父親なんですよ、こ、この人は!」
一気に捲し立てた。
息継ぎをするのを忘れていて、呼吸が乱れる。
「ホントなの?雅史、圭太ちゃんに怪我をさせたって」
「怪我って言っても頭にタンコブできたくらいで、たいしたことなかったけどな」
「あ、そう。そうね、確かに今は怪我もなさそうね。じゃあ、それも許してあげて、杏奈さん。うっかりって誰にでもあることでしょ?相手をしないあなたにも責任はあるんだし、圭太ちゃんの怪我もたいしたことなかったんだから、もう仲直りしたら?ね?」
「お義母さん、それ、本気で言ってますか?」
「そうよ、もういいでしょ?ほら、雅史も反省していることだし。もう浮気なんて馬鹿なことしないわよね?杏奈さんも自分の非を認めて、雅史に謝罪したら?」
「だっ、だから、そうじゃなくてっ!」
言い返したいのに、悔しくて涙が込み上げてきて言葉が続かない。
「いい加減にしないかっ!」
その時、思わぬ方向から怒号が聞こえた。
「親父?」
いましがたまで、会話にも入らずずっとテレビを見ていたと思っていた義父が、仁王立ちして私たちを見下ろしていた。
「黙って聞いていれば、道枝も雅史も、杏奈さんの言いたいことをちっともわかろうとしていない!道枝、考えてみろ、お前が杏奈さんの立場で雅史が圭太で、俺が浮気相手と遊んでいたせいで雅史が怪我をしたら?お前は俺を許せるのか?あ?どうだ、言ってみろ!」
義母と雅史に声を荒げているこの状況は、今まで見たこともない義父の姿だった。
「どうだ?道枝、それでもお前は俺を許すというのか?雅史が大怪我してたかもしれないんだぞ?」
「それは……」
返事につまる義母。
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