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「必要であるという理由は、なに?」
彼女はゾウを眺めながら僕に問う。
長くもなく短くもないまつ毛。手入れの行き届いていないロングヘアが頬にかかっている。もっと身だしなみに気をつければ簡単に恋人ができるだろう。
してほしくないという気持ちがあるのは、きっと彼女に好意があるからだろう。
彼女の視線の先には子供のゾウ。恋人関係のその先に生まれるであろう命。
恋人は必要、というか求めるもの。ではないだろう。彼女はどこまで恋愛に興味があるのだろうか。
恋だの愛だのの話をした時も同じ調子だった。彼女に恋愛感情とかいう本能的な情動はないのだろうか。僕には彼女にはない本能的な情熱がわかる。けれど、それを言葉にするのはものすごく難しい。
大人になればなるほど、恋も愛も言葉にならない。僕と彼女の関係性は明言されたものではなかった。
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