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「恋人? 友達じゃなくて?」
「人による。でも一対一の関係にある恋人にそれを求めるのが定石なのでは?」
僕もいつの間にか、彼女と同じくらい会話に熱が籠ってしまう。ここがゾウの檻の前であることをついうっかり忘れてしまう。晴天で、ソフトクリームが溶けそうなことも、忘れてしまいそうになる。いけないいけない。
ここは大学の空き教室でも、中庭でも、公園でもないのだ。ロケーションを楽しむはずの動物園の良さを全て潰してしまいかねない現実的な会話はここでは不適格だろう。
「友達が一人しかいない人は?」
「恋人みたいな関係になるんじゃないか?」
ふむ、と何か関心したような声を漏らして、アイスクリームのコーン部分を齧った。空気が澄んでいるから齧ったコーンの粉末が太陽の光でふわりと飛んでいくのが見えた。
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