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「……ヤッパリ、ソウデスヨネ」
真楽は。自慢げに語るはやてに何も云えなくなっていた。
はやての祖父の正体は、大妖怪のぬらりひょんである。彼は孫のはやてを猫可愛がりしていた。はやてに瀕死の重症を負わせた酒呑童子を嫌っており、ここぞとばかりに多くの嫌がらせをしているよう。
今回の豆まき云々についても、おそらくは嫌がらせの一瞬なのだろうと、真楽は推測した。
『……ま、め、こわ、い』
足元には豆は嫌だと、気絶しながら訴える酒呑童子がいる。白目を向いたまま、下級あやかしたちのおもちゃにされても意識は戻らないままだ。
そんな酒呑童子に向かって、真楽はそっと合掌する。
「面白かったー! 皆、また、来年もやろうね?」
鬼の恐怖を知らぬはやては、節分を楽しんだ。まだ余っている豆で、小鬼や他のあやかしたちとおとなしめな遊びを続ける。
あやかしたちの楽しそうな嗤い声、そしてはやての笑顔は、夕日の中へと溶けていった。
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