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酒呑童子の顔から血の気がひいていく。ジリジリと彼に迫るはやてと、その他の悪のりしたあやかしたち。
酒呑童子は自分が最強格のあやかしであるということを忘れ、ヒュッと息を飲んだ。
自身に満ちた出で立ちから一転、許しを乞う情けない姿へと成り果てる。いやいやと首を左右に振り、泪すら流していた。
「ふふ、大丈夫ですよおー。僕らは優しいので」
『どの口が……って、おいっ!?』
いつの間にか復活していた真楽によって、酒呑童子は捕まってしまう。身動きが取れなくなり、裏切り者と叫んだ。
あやかしたちは弱いながらも豆を酒呑童子へと投げている。それに関しては痛くも痒くもないため、酒呑童子は視なかったことにしていた。
しかし眼前に差し迫る美しい少年、はやてのことだけは軽視できない。むしろよそ見でもしようものなら、その瞬間に真楽のような屍に成り果ててしまうのだろう。
酒呑童子はそれしか頭になく、距離をつめるはやてに向かって恐怖の雄叫びをあげた。
「酒呑童子。自ら鬼役を買って出たのだから、それ相応の覚悟を持たないと……ねえ?」
笑顔百パーセントのまま、酒呑童子が置いた木箱を手に取る。そして……
『ふ、ふざけ……むぐぅー!? むー! ごばぁー!』
木箱にある豆を全て、酒呑童子の口へと突っこんだ。
酒呑童子は白目になり、その場に倒れてしまう。ピクピクと痙攣し、意識を喪った。そんな酒呑童子を、あやかしたちは棒を使ってつついたりしている。
「……ふう」
意識すらない酒呑童子を見下ろしながら、はやては満足げに横髪を払った。
「豆まき、楽しいですね!」
酒呑童子にではなく、真楽へと喜びを伝える。
真楽は腕を組みながら兄である酒呑童子へ、かわいそうと呟いた。
「……最後、豆まきちゃうと思うで?」
鬼の口に豆を全て突っこむ。これは豆まきという次元ではないと、首の後ろを掻きながら教えた。
するとはやてはきょとんとした様子で瞬きをする。
「え? そうなんてすか? でも、本物の鬼がいた場合は、口の中に豆を全部突っこむのが豆まきだって教わりましたよ?」
悪びれた様子もなければ、嘘をついているようにも見えなかった。純粋かつ、子供のような眼差しで、真楽を見ている。
真楽は嫌な予感を覚え、誰に教えられのかを尋ねた。
「おじいちゃんです。豆まきの正しいやり方は、鬼の口を塞ぐ事だって云ってましたからね」
エッヘンと胸をはる。
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