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「死神さん。死んだ後の世界ってどんな所なんだ?今は特例でここにいられるんだろ?」
「そうッスね〜。悪い事をしてなかったら天国で、楽しい事ばっかりの世界に行けるんじゃないんスか?」
死神なんてのも今目の前にいるのだから天国とかもあるのだろう。昔の自分では信じられない事も今なら全て受け入れられる。
世界が洗濯された白Tシャツの様に見えて、透明な彩りを身近に感じる事が出来る。
怖い位に自由を感じる。
木の葉についていた水滴が僕の鼻に触れようとして、地面に落ちた。
……何かおかしい。
「……なあ死神さん。あんたあめだまに、何か混ぜたか?」
「ん?何の事ッスか?」
「こんな清々しい気分になった事が無いんだ。テレビのCM1つで簡単に病む様な奴なんだ、僕は。それが嘘みたいに、体が軽いんだよ」
この状況への戸惑いが終われば、あらゆる疑問が噴出するのは必然だ。
すぐに非現実的存在を信じられたのは何故だ?自分が幽霊になったと受け入れられたのは?自分の頭がイカれてなければ、こんなすぐに信じられる筈は無かったのだ。
「……そろそろ人里に着くッスね」
いつの間にか山の斜面は終わりを告げ、家屋が見え始めていた。車でもここまで辿り着くのに1時間はかかるはずなのに。
「……僕の頭、どうなってるんだ?」
「村上さん、今の状況に整合性や現実の物理法則なんて期待しないで下さいッス。あなたが飴玉を舐めた事もここまでの道程も全部、既に起きた事だから」
少女は、語尾が抜けた死神は妖艶に微笑んで青い舌を僕に見せつけた。
ああこいつも信頼できねえ、って思った。
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