1 遠野幸紘の日常 ①

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 幸紘は水音を耳にして真っ暗な林の陰を見上げる。 「雨?」  でなければ鳥に糞でもひっかけられたのか、と幸紘は恐る恐る髪や肩に触れる。幸い汚れが手にべたりと張り付くことはなかったので再び先を急いだ。  実は高い木の上から幸紘を眺めていた者がいたのも、軽やかな水音とともにその姿を消したのも、この時の幸紘は知らないままだった。
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