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03.新たなシェルターを求めて
「やられた」
落胆よりも歓喜の色合いが濃い、爺の声が耳に届く。
ホバーボードってのは乗り心地がいい。
俺の狙いは最初から銃じゃなくて足下のボードだった。
盗人の手袋はミッションに成功すると抜け落ちる。
抜け落ちるたびに俺の経験値は上がるから、脱皮と呼んでいる。
今頃、手袋は跡形もなく消えているだろう。
俺はヤマカシとシェルターに急ぎ戻った。
あの場面で爺がはったりをかますとは思えない。
以前の文明ではお互いの位置が分かるものや、遠くでも会話できるものがあったらしい。
遠目にも煙が上がっているのが見える。
仲間の無事を願う気持ちに比例するようにホバーボードはスピードを上げた。
「敵の気配はないようだが、罠の可能性も十分に考えられる」
「分かってるよ。だから……」
俺は大声で仲間の名を呼んだ。
「罠かもって言った傍からこれだ」
「うるせえ。敵が出て来たら、締め上げて情報を盗るまでだ」
「キッドは短気なんだよ。さっきもお陰で酷い目に遭っただろ」
「素敵な戦利品も手に入っただろうがよ」
「いつか、死ぬぞ」
「キッド!」
声の主はマウスの紅一点、シルビア・フォックスだ。
雪原に馴染む銀の毛皮コートと帽子。
「三人とも何とか無事よ」
シェルターに残っていたのは、シルビアとイダテン-R、そして発明家テスラだ。
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