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01.否定された世界
核の冬――。
そう呼ばれてどのくらい経つのだろうか?
暦が失われ、実際にどの程度の時が過ぎたのか分からない。
地軸がずれ、星の運行から角度や時間を割り出すのが難しい。
この世界は死んだも同然なのだ。
時間など、意味を持たないのだから。
曰く、否定された世界。
生き残った人類の多くはテクノロジーに頼りすぎていたため、未だ無力だ。
高高度核爆発による強烈な電磁パルス攻撃が最重要インフラであるネットと電力を破壊したからだ。
疑心暗鬼の混沌世界への加速度は増していく一方で、希望という言葉さえも喪失した。
親父や集落の大人たちにそう習ったが、半分以上、単語の意味が分からない。
話に聞く実物を見たこともないし、言葉のみで伝えられた口伝だからだ。
貧しい生まれ故郷も世界政府の人狩りによって滅ぼされた。
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