01.否定された世界

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子供だった俺はキャンプと呼ばれる施設で死と隣り合わせの訓練を受けた。 暫くして仲間たちと脱走に成功した。 世界が貧しく、そして住みづらくなったのは核の冬だけが原因ではなかった。 人類が築いた知識は紙媒体から電子媒体に移っていたためほとんどが消えた。 かつてあったという自動翻訳デバイスも機能せず、民族間の溝が深まった。 キャンプに収容されて良かったことが一つだけある。 集落では伝わっていない知識の習得だ。 世界政府が電子技術を独占し、俺たち庶民はその恩恵に(あずか)れない事実を知った。 核の冬以降、文明レベルは数世紀遡り、居住地には用途不明の朽ちた残骸が土に還らぬ屍として点在している。 この地に生きる者は、それをシェルターと呼んだ。
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