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「マウス・ザ・キッドともあろう者が逃げるだけか?」
「なんだと?」
「安い挑発に乗るなよ」
「爺様、所詮は大嘘を吐く者なんですよ」
「そのようだな、リトル・ドッグ。キッドが鈍足だって噂は本当だな」
「早く俺らに喰われちまいなよ」
「もう我慢ならねえ!」
俺はヤマカシの背から下り雪原に着地すると、迎え撃つように狩猟者と向き合った。
ヤマカシの溜息が聞こえる。
「もっと近づけよ。そんな距離じゃ避けちまうぜ」
「言うじゃないか。新雪に膝まで埋まっている癖に」
ヤマカシは一飛び数十メートルを移動し、着地の衝撃痕すら残さない。
狗は六足歩行で体重を分散し、爺に至ってはホバーボードで着地すらしない。
凡人の俺の両足は雪に突き刺さっている。
「カエルに負ぶさって逃げても、俺らの二つの鼻からは逃げられないよ」
「知ってるさ。ヤマカシだけならまだしも俺は逃げられない」
「逃げられないか。観念したようだな」
「いや違うな。逃げる必要がない」
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