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涎を垂らし、直線的に襲いかかってくる双頭の狗。
間合いを詰めて一気に加速する瞬間、俺は拳を構えた。
狗はまだ拳の制空権の向こう側。
だが俺は距離などお構いなしに右ストレートを放つ。
「ギャン!」
狗が空中でバランスを崩す。
俺が見舞ったのは、仕込針だ。しかもカエシ付で引いても簡単には抜けない。
双頭の鼻っ面と瞼に満遍なく針が刺さり、涎まみれの顔には鼻水と涙が追加された。
「距離感はドンピシャだな」
針さえ喰らわなければ、確実に俺の喉笛を掻き切ったであろう狗の顔。
間合いに入った狗の横っ面に左フックを打ち抜く。
衝撃波が顎の付け根を捻れながら粉砕していく。
「自慢の鼻が二つあっても、二倍にはならんのよ。精度は同じだ。頭もな」
俺はノックダウンした狗を見下ろし、爺を目に捉えながら自分の頭をトントンと二度叩いた。
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